宮野鼻 |
実は千葉さんは今2つ目のオール電化施設でまた新しいチャレンジを始められているのです。今度は水沢市立中学校給食調理場、これは水沢市内の中学校のセンターです。中学校というのはやはり食事の量も違うなどで大変らしいのですが、今新たに学校給食調理場の進化に大きな一石を投じるチャレンジをしていらっしゃるということで、その辺を少しご紹介いただけますか。 |
千葉 |
当初真城の時は、何食まで電化厨房は対応できますかねという話の中で私は「1000食までです」と言ったのを覚えているのですが、水沢市3中学校で2000食規模の施設を8月19日から2学期の開始とともに稼動しております。中学校の2000食ですので小学校の1.2倍から1.3倍の規模です。2400食程度の規模かなと思っております。食数が3倍に増えただけではなく、調理師も真城のときの5人から13人に変わりました。その中でやはり衛生管理の基準が変わりまして、記入、記録用紙が増えました。用紙類をどうしようかと悩んでいる時に、昔真城にいた頃に食材の中心温度を測った時にそのまま機械のほうで記録されればいいねという話をしたのを思い出しました。そんな時に、実はこういうことを考えていますという電力さんからの話がありまして、チャレンジすることになったのです。今までは朝記入する用紙を準備して、記入するペン類はアルコールで消毒して厨房に持っていくことでその日一日が始まったのですが、そのようなことが解消されつつあります。例えばそれぞれの機器に温度計がセットされております。回転釜6台にはそれぞれ温度計、それからフライヤーには油の温度を測る温度計が出入り口にセットされております。また、中心温度を測る温度計が入っております。それからブラストチラー関係、スチームコンベクション関係それぞれ温度計が3本入っておりまして、上の段、下の段、中の段という感じです。さらに同じホテルパンでも右と左の位置に温度計を差し込んで、温度の確認ができるシステムになっています。そこまでできるのであれば電力さんに室内環境のほうも記録をお願いしますということですべて記録できるようになっております。それも部屋ごとに全部ついています。また、夜間に冷蔵庫、冷凍庫、消毒保管庫が本当に稼動しているのか、保管庫の中の温度はどうなっているのかについても全部温度計が入っておりまして、事務室のパソコンに記録できるようになっております。ですから今は本当に変な楽しみが増えまして、朝行くとまずはパソコンを覗いてみる。どれか機器がエラー表示になっていないか、全部記録になっているか、夜間の洗浄室は温度湿度がどのようになっているか、などを確認します。調理師さん方も最初はびっくりして、「この温度計どうすればいいの」という感じだったのですけど、「差し込めばいいだけだよ」ということで解決しました。温度計の先はぶつけたらすぐ壊れるものですから、回転釜の温度計は太いタイプの温度計で、しかも釜の深さに合わせて長いものにしてもらいました。いまのところ順調に稼動しております。今後このシステムの中に当日の作業動線、作業工程表を、手書だったのをパソコンに組み入れまして、その日の工程に合わせて、機器の使いまわしとか、例えば今日どの時点において機器に電気を入れるかなどを管理できるようにしたいと思っています。それによってデマンドを少なくするように厨房機器を使用するための少しの手立てになるのではないかと思い楽しみにしております。それからびっくりしたのは、各部屋ごとの水の量とかお湯の量、洗浄室で100℃の洗浄機に行く部分と40℃のそれぞれ蛇口、手洗いに行く部分が記録されていることをこの間初めて知ったことです。おそらく私達はそこまでのデータはいらないのですが、今日おいでくださっている方々はそれぞれ関心のある部分があるのではないかと思います。 |
宮野鼻 |
ありがとうございました。本当に理想に着々と近づいていっているという印象を受けましたが、阿部先生、今の話を聞かれていかがでしたか。 |
阿部 |
なにしろ現場を歩いて出てきたデメリットをなんとかメリットにということで記録ということをさっきから随分話されていましたけど、パソコンを見ただけで誰がどこでどのように働いているのか、今どのくらいの温度で揚がっているかなどが良く分かるような状態というのはすばらしいと思います。いわば、いちいちメモをとって記録してということではなく、このように連続的に記録ができるということは、その中で何かおかしいことが起きたときにすぐに発見できるわけです。一部三重町の学校給食がパソコンでやっているという話を聞いたのですが、どの程度までやっているという話は聞かなかった。今回の千葉さんのところの調理場は非常に注目されるし、学校給食の新しい基準をいとも簡単にクリアできるようなそういうシステムではないかと思います。 |
宮野鼻 |
ありがとうございます。こういうことに関し、電気というエネルギーの特性が非常に大きく貢献していると思います。デジタルデータとしてきちっと記録をとっていく、あるいは芯温をベースにしてコントロールしていく、これはガスでもできるじゃないかというお話を伺いますし、できると思うのですけど、より高精度にできるということになると、やはり電気のほうが強いのです。先程フライヤーのデータをみていただきましたけど、スチコンなんかでも同じ温度をずっと維持して加熱して行くというところをデータとして取ってみますと、全然精度が違います。やはり炎で温度を制御するのと、非常に熱効率の高いIHでコントロールするのでは、デジタル化したデータに揃えていくという意味では差が出る。これは電気の大きな強みだと思います。HACCPの調理における最大のCCPは加熱温度です。加熱温度が芯温としてどの程度クリアされていますかという部分が最大のCCPです。これが本当に正確にきちっと実施、検証、記録できるということで、私はまだまだ電気機器が調理の中で貢献できる分野が広がっていく、特にこういう風にトータルにIT技術を使って間違いのないように衛生管理をやっていこうという場合に非常に大きな可能性を持っているのではないかと思います。 |