「病院給食施設の設計マニュアル」ダイジェスト
  1. HOME
  2. 達人インタビュー&コラム
  3. 達人インタビュー
第2回
給食施設におけるアレルギー対策
(3)食物アレルギーの基礎知識
 ①アレルギー発症のメカニズム
Q:食物アレルギーの主な症状と発症のメカニズムを教えてください。
坂本:私たちの体には、有害な細菌やウイルスなどの病原体の侵入や増殖を阻害する「免疫」という仕組みがあります。食物アレルギーとは、本来は無害なはずの食物に対して、「免疫」が間違って働いてしまった状態を指します。体内に取り込まれた食物に含まれる数種類の蛋白質、これをアレルゲン蛋白と言いますが、皮膚や粘膜に分布するマスト細胞の表面を被うIgE(アイ・ジー・イー)抗体と特異的に結合すると、ヒスタミンなどの化学物質が大量に放出され、蕁麻疹などのアレルギー症状が引き起こされます。アレルゲン蛋白が体内に取り込まれても、これと特異的に結合するIgE抗体がなければ症状は出現しません。食物アレルギーは、食物を食べた時だけでなく、接触や吸い込んだ時にも起きるので注意してください。
②現代病としての花粉フルーツ症候群
Q:原因食物以外が関係して食物アレルギーを引き起こすこともあるのでしょうか。
坂本:食物アレルギーには、食べている食物が発症の原因となるクラス1食物アレルギー、気道や皮膚から侵入した様々なアレルゲン蛋白が原因となるクラス2食物アレルギーがあります。クラス2食物アレルギーの原因蛋白は、食物に含まれるアレルゲン蛋白と共通した構造をもっています。ですから、この原因蛋白を吸ったり接触したりすると、食物アレルギーになってしまうのです。交差反応と呼ばれています。カバノキ科のシラカバ、ハンノキ、ヤシャブシ花粉症とリンゴなどのバラ科のフルーツアレルギーの関係がよく知られています。そのほかにも、ラテックス(生ゴム)との接触で、アボカド、バナナ、クリ、キウイのアレルギーが発症します。前者を花粉・フルーツ症候群、後者をラテックス・フルーツ症候群と呼んでいます。(図4)
クラス2食物アレルギーでは、昨日までおいしく食べていたのに、突然、この食物でアレルギーが起きてしまいます。予期せず起こることがあるのでとても危険です。

■図4:花粉と交差抗原性が報告されている果物・野菜などの組み合わせ

出典:『ぜん息予防のためのよくわかる食物アレルギー対応ガイドブック2014』

拡大クリックして拡大

③食物アレルギー症状の発見とポイント
Q:食物アレルギーを発見したり見分けたりするポイントにはどのようなものがありますでしょうか。
坂本:即時型の食物アレルギーでは、原因となる食物を摂取して10分から30分程で症状が現れることが多く、ほとんどが2時間以内に症状が出現します。代表的な症状は以下の通りです。中でも、5~8の症状が見られたときはアナフィラキシーが疑われ、アドレナリン自己注射器の「エピペン」の使用や病院への緊急搬送などの対応が必要になります。

1.皮膚の症状(かゆみ、蕁麻疹、赤み(紅斑))


2.目の症状(結膜の充血、かゆみ、まぶたの腫れ)


3.口・のどの症状(口・のどの中の違和感、イガイガ感、唇・舌の腫れ)


4.鼻の症状(くしゃみ、鼻汁、鼻づまり)


5.呼吸器の症状(声がかすれる(嗄声))、犬が吠えるような咳、咽喉が締め付けられる感じ(咽頭絞扼感)、咳、息が苦しい(呼吸困難)、ゼーゼー・ヒューヒューする(ぜん鳴、低酸素血症)

6.消化器の症状(腹痛、吐き気、嘔吐、下痢)


7.循環器の症状(脈が速い(頻脈)、脈が触れにくい、脈が不規則、手足が冷たい、唇や爪が青白い(チアノーゼ、血圧低下)


8.神経の症状(元気がない、ぐったり、意識朦朧、不機嫌、尿や便を漏らす(失禁))


「アナフィラキシー」とは、皮膚、呼吸器、消化器、循環器、神経などの複数の臓器に比較的重症な症状が現れることを指します。さらに症状が進行し、血圧が低下したり酸素が十分に取り込まれなくなると「アナフィラキシーショック」、これが原因で死亡に至ると「アナフィラキシーショック死」となります。アナフィラキシーになってしまっても、落ち着いて適切に対処すれば、アナフィラキシーショックへの進行を予防することができます。日ごろから正しい知識を身につけておくことが大切です。 なお、食物アレルギー患者の約1割がアナフィラキシーを経験していると推定されています。
※エピペン…食物アレルギー症状に対する万能薬であるアドレナリンの自己注射器です。病院に搬送される前に、現場でアナフィラキシーの進行を緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤です。
TOPへ戻る