「病院給食施設の設計マニュアル」ダイジェスト
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第2回
給食施設におけるアレルギー対策
(4)食物アレルギーへの対応策
 ①即時型食物アレルギーへの対応策
Q:食物アレルギーを発症してしまった場合はどのように対応すべきでしょうか。
坂本:その場でできる食物アレルギーへの対処法はとてもシンプルで、抗ヒスタミン薬の服用と「エピペン」を使ったアドレナリンの筋肉注射の2つです。蕁麻疹や目の充血や浮腫、くしゃみ、鼻汁などの鼻症状、口や喉の症状に限られておれば抗ヒスタミン薬の服用で症状は改善します。しかし、アナフィラキシーが疑われる場合には、アドレナリンの筋肉注射が最も確実で効果的な対処法です。劇症型といわれるアナフィラキシーの場合には、発症して15分以内に窒息の危険性があるので、迅速なアドレナリンの筋肉注射が必要となります。
アナフィラキシーや喘息の既往がある食物アレルギー患者、ナッツやソバのように微量でもアレルギー症状が引き起こされる食物アレルギー患者、病院が近くにない食物アレルギー患者の皆さんは、「エピペン」を常に携帯して自己防衛してください。
「エピペン」には以下のような作用があります。
  • 心臓の動きを強くして血圧を上げる

  • 血管を収縮して血圧を上げる
  • 皮膚の赤み(紅斑)やのどの腫れ(口頭浮腫)の軽減
  • 気管支を広げて呼吸困難を軽減する
エピペンには、小児用の0.15㎎製剤(体重15㎏~30㎏未満用)0.3㎎製剤(体重30㎏以上用)の2種類があります。医療機関で、アナフィラキシーの危険性があると判断された場合に処方してもらうことができます。 いざという時に正しく使えるよう、日ごろから使い方を練習しておくことが不可欠です。かばんやランドセル、職員室、保健室、教室など、誰でもすぐに取り出して使用できる場所に保管しておくことが大切です。また、学校や保育所、自治体ごとに食物アレルギー対応マニュアルを作成し、チームとして迅速かつ的確に対応できるよう、日ごろからシミュレーションをしておきましょう。
②学校や保育所などにおける食物アレルギーへの給食対応
Q:学校や幼稚園・保育園などで食物アレルギーへの対応策として取り組むべきことはどのようなことでしょうか。
坂本:昨年3月、文部科学省から「学校給食における食物アレルギー対応指針」が出されました。学校給食における食物アレルギー対応の大原則は、①食物アレルギーを有する児童生徒にも給食を提供する。そのためにも、安全性を最優先とする。②食物アレルギー対応委員会等により組織的に行う。③医師の診断による「学校生活管理指導表」の提出を必須とする。④安全性確保のため、原因食物の完全除去対応(提供するかしないか)を原則とする。⑤学校および調理場の施設設備、人員等を鑑み過度に複雑な対応は行わない。⑥教育委員会等は食物アレルギー対応について一定の方針を示すとともに、各学校の取組を支援する、となっています。
食物アレルギー対応を要する子どもたちの状況や給食の調理体制などに合わせて、以下のような対応を個々に選択して行っています。

献立表対応…メニューごとに原材料を全て献立表に記載し、保護者に事前に伝えます。保護者はその情報に基づいてメニューの中から取り除いて食べるもの、又は食べるメニューを決めて園児や児童・生徒らに指示します。ただし、最終的な判断が保護者や子どもにゆだねられてしまうため、除去食や代替食と組み合わせることが望ましいです。

弁当対応…すべてを自宅から持参する「完全弁当対応」と部分的に自宅から弁当を持参する「一部弁当対応」があります。除去食や代替食がなされていても、一部必要な場合もあります。

除去食…調理の過程で特定の原材料を加えない、又は除いた給食を提供します。

代替食…除去した食材の代わりに別の食材を加えたり調理法を変えたりして栄養価を考慮し完全な献立を提供すること。最も理想的なアレルギー給食の対応です。

参考文献:『ぜん息予防のためのよくわかる食物アレルギー対応ガイドブック2014』

こうした給食対応の他に、アレルギーの原因になりやすい食物を使わないメニューを増やすこともひとつの対策です。たとえば、頻度が高い鶏卵や牛乳、年齢と共に頻度が増加する甲殻類やキウイ、症状が重いソバやピーナッツなどが対象となります。そうすることで、給食の調理や配膳が安心してスムーズに行うことができるし、子どもたちも同じメニューの給食を楽しむことができます。
③給食調理現場での対策とポイント
Q:学校及び幼稚園・保育園の給食関係者が心得ておくべき給食調理上のポイントを教えてください。
坂本:調理・配膳はアレルゲンが混入しやすい作業です。調理現場では、以下のようなきちんとした管理や確認を日常的に行えるよう整備することが重要です。

1)原材料(加工食品)の選定と管理

納入業者から詳細な原料配合表を取り寄せ、納品ごとに確認します。普段と違う商品が納入されたり、原材料が変更される場合もあるため必ず毎回確認します。保管方法や賞味期限にも注意しましょう。

2)調理施設・器具

アレルギー食の専用調理スペースを設けることが理想です。難しい場合は、床に線を引いた専用コーナーや一時的な専用スペースなどを確保しましょう。器具や食器はできるだけ専用のものを使用しますが、共用で使用する場合は洗剤で丁寧に手洗いするなど混入のリスクを減らしましょう。

3)人員配置・調理手順

混入しないための配置や調理作業工程を計画し、専用スペースでの作業者は限定するとよいでしょう。また、意識を高く持ち、専用スペースの出入りの際は、手や調理着にアレルゲンの付着がないか気をつけます。

4)指さし声だし確認

業務を始める前に、全体の調理からとり分けの手順、使用する調味料などの確認を複数で行い、ホワイトボードなどに明記しておき、食札や作業手順書を必ず手元において作業します。配膳後には、調理担当者以外の調理員もしくは栄養士と一緒に食札と手順書を確認して作業工程に間違いがなかったか指差し呼称しながら確認作業をします。その場で本人専用の袋やコンテナに入れて、教室まで配膳します。

参考文献:『ぜん息予防のためのよくわかる食物アレルギー対応ガイドブック2014』

④給食関係者へのアドバイスとメッセージ
Q:最後に給食関係者へのアドバイスやメッセージがあれば、お願いします。
坂本氏写真
坂本:万全の対策をとっていても、残念ながらミスや事故は起こります。クラス2食物アレルギーのように、予期せず症状が出現することもあります。給食に携わる栄養士や調理師などの皆さんは、学校や保育所の食物アレルギー対応委員会等としっかりとコミュニケーションを取り合い、現場の声を届けてください。そして、保護者や子どもたちとも、こうしたリスクを共有する努力が求められます。そのためにも、年に1回は、関係者全員が給食のすべてのプロセスを点検・確認し、理解する機会を設けることが大切だと思います。給食に携わる皆さんがこうした取り組みを推進していただければ、食物アレルギーのリスクが軽減し、いっそう安心でおいしい給食が提供されるようになると確信しています。
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