コラム
医療・福祉施設における災害時の食事提供と備蓄食品
松月弘恵
東日本大震災が広範囲の地域に甚大な被害を与えた中、給食施設は食事を出し続けた。このシリーズでは今後の災害対策の一助となることを願い、被災地で実施したインタビュー調査から得られた知見を掲載する。

東日本大震災で被災した医療・介護系給食施設の実態①

(1)給食生産方式と熱源

 給食の生産方式には図1に示すように従来からの施設内調理方式と院外の調理加工施設を使用して調理を行うセントラルキッチン(以下、CKと略す)方式がある。施設内調理方式は食材、水・光熱を経営体が調達し、職員を直接雇用して食事を生産する直営給食と、給食会社が食材調達や職員雇用を行い施設で食事を生産する委託給食に大別できる。
 CK方式ではクックチル、クックフリーズや真空調理などの方法を用いて生産した調理済加工品を、受入れ施設のサテライトキッチンに配送し、再加熱して供食する。施設によってはサテライトキッチンで主食や汁を追加生産する。施設内調理はガス・電気や蒸気を熱源とするが、CKは計画生産を前提としており、作業の標準化が可能となる電気を熱源とすることが多い。給食生産の資源である食材、水・光熱、物流、通信が途絶え、職員の出勤が困難となる災害時には、給食運営形態や生産方法が異なれば、給食施設が直面する問題も異なる。

図1 食事提供システムと資源

図

(2)CK利用施設と施設内調理施設に対する震災後調査

 筆者らは2011年8月に東日本大震災におけるCK利用施設と施設内調理施設の食事提供の相違点と問題点を明らかにする目的で、仙台市及びその周辺の中小規模の医療・介護系施設であるCK利用施設8施設、施設内調理施設8施設の2群に対し、震災後1ヶ月間の食事提供に関して事前にアンケートを配布し、それに基づきヒアリングを行う半構造化インタビュー調査を行った。
<調査方法>
○対象:宮城県仙台市周辺の病院・介護保健施設、グループホーム
    A群:セントラルキッチン活用施設…9施設
    B群:一般的給食提供施設…9施設
    ※施設の種類、食数、地域、水系で2群のマッチングを行う
 2群の施設の築年と被災状況はほぼ同様であり、施設の被災状況は大規模半壊1施設、一部損壊16施設, 被害なしが1施設であった。厨房の被害はCK利用群2施設、施設内調理群は3施設に生じた。 厨房機器の被害が大きく厨房が使用できなかった1施設は、隣接するデイケアの台所を一時的に利用し食事を提供した。厨房が地下にあった2施設は採光や換気ができないため、ランドリー室や玄関近くのコンコースを代替厨房とした。
調査施設の概要
調査施設の概要
 ライフラインの被害と復旧には地域差が大きかった。断水期間は約1週間の施設が多かったが、被災後3週間以上断水した施設が3施設あった。水系の関係で断水の被害のない施設も2施設あった。給水車が施設に来たのは透析施設を有する1病院と、震災後福祉避難となった介護福祉施設2施設のみで、病院であっても中小規模であれば給水所に出向かなければならなかった。給水を待つ列に長時間並んでも、グループホームでは1世帯とみなされ、1日2Lのペットボトルの2本しか受け取れないケースもあった。

 電気は概ね3~5日間で復旧したが、停電が2週間長期化した施設が1施設、4月7日の余震で再度2日間停電した施設が1施設あった。自家発電装置はCK利用施設3施設と施設内調理施設5施設に設置されていたが、必要な加熱調理機器に接続されていなかったり、使用時の騒音が大きく、近隣住民への配慮から現実的には使用できないケースもあった。

 都市ガスの不通期間は3週間以上長期化した。不通期間の代替は、入所者20人未満のグループホームではカセットコンロや野外炊事、それ以上の規模の施設ではLPガスやLPガス変換機を用いた。次回はそれらのライフライン状況にも関わらず、いかに食事を提供したかを紹介する。
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