「病院給食施設の設計マニュアル」ダイジェスト
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第3回
別府 茂氏
災害から学ぶ食糧備蓄のあるべき姿

2016年4月の熊本に続き、10月の鳥取、12月には福島沖で強い地震が発生するなど、わが国は大型地震が頻繁に起こる地震活動期に突入したと言われています。しかしながら、東日本大震災で食糧備蓄に関する問題が浮き彫りになったにも拘わらず、各地域や施設における対応策の整備は、必ずしも十分とは言えないのが実情です。
そこで、ホリカフーズ株式会社で長年非常食等の商品開発に携わってこられるとともに、日本災害食学会の理事・副会長として日本各地での啓発活動や講演を精力的に行っておられる別府茂氏に、食糧備蓄のあるべき姿について伺いました。

川口氏写真
[目次]

プロフィール

別府氏顔写真

1977年新潟大学農学部卒業、同年堀之内缶詰(現 ホリカフーズ)入社。 社内研究者として介護食、自衛隊向け戦闘糧食などの開発に取り組む中、1995年の阪神淡路大震災の被災地を訪れ、食糧備蓄内容の現状やあり方等を調査。また、2004年の新潟県中越地震では自らが被災し、高齢者をはじめとする被災者の実態やニーズを踏まえた災害食の必要性を痛感し、商品開発に取り組むと共に、中心メンバーの一人として日本災害食学会を設立。さまざまな調査・研究の成果を全国に発信している。

(1)これまでの活動について
1)まず最初に、ホリカフーズ株式会社の概要と別府さんが取り組んでこられたお仕事についてお聞かせください。

■レスキューフーズ

別府:ホリカフーズはもともと堀之内缶詰株式会社として発足し、主に食肉製品の缶詰をOEMで製造する会社でした。1963年からは自衛隊の戦闘糧食を担当していましたが、1995年の阪神淡路大震災の際、自衛隊の方だけでなく被災地で救援活動に携わられた方々にも食事についてのご意見をお聴きしたところ、「主食はクッキーやクラッカーではなく、ご飯でなければ腹持ちが良くない」、「体が冷えているので温かいものが食べたい」等、様々な要望があることが分かりました。
そこで私は、災害時に被災地で活動される方々を対象とした非常食の開発を担当することになり、ヒアリングで得られた意見をもとに「レスキューフーズ」と名付けたシリーズの商品を製品化し発売しました。すると、消防士をはじめとする救援活動を行う方々から、「咽喉がカラカラになるからお粥やそうめんなどから食べたい」、「座って食べることができないから立ったまま食べられるように工夫してほしい」等の意見が寄せられ、業務の内容や現地の環境等によってニーズが全く異なることが分かりました。そこで、災害時に通常とは異なる環境にある方々のための食品開発の必要性を痛感し、今日まで取り組み続けている次第です。
2)別府さんは、日本災害食学会の理事で副会長も務めていらっしゃいますが、学会ではどのような活動をされているのですか?
別府:日本災害食学会は、大規模地震などの災害時に起こる食に関する様々な問題を考え、食生活の向上に寄与することを目的に、新潟大学副学長の門脇基二氏を理事・会長として、2013年9月に発足しました。
これまでの非常食の概念にとらわれず、避難所や自宅で被災生活をする高齢者や乳幼児、障害者や疾病患者など、日常の社会においても特定の食事を必要とされる方々、さらには救援活動に携わる方々など、被災地で生活・活動するすべての人々に必要な食事について研究しています。残念ながら、災害時の食事だけでなく平常時における備蓄や流通など社会・生活の備え、想定される被災生活、ライフラインやその代替システムといった広範囲にわたる課題や、災害時の段階的な状況変化に応じた理想的な災害食の開発や保存方法など、解決すべき多くの課題が残されています。
これらの問題解決に向けて行政・研究機関や民間企業の研究活動及び連携を促進すると共に、医療・教育等の幅広い分野での情報交換・知識の集積の場作り、災害時の食に関しての研究者の育成と社会への正しい情報の提供を目指して、各種の主催事業、研究発表、講演・展示活動などを行っています。
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