コラム
医療・福祉施設における災害時の食事提供と備蓄食品
松月弘恵
東日本大震災が広範囲の地域に甚大な被害を与えた中、給食施設は食事を出し続けた。このシリーズでは今後の災害対策の一助となることを願い、被災地で実施したインタビュー調査から得られた知見を掲載する。

災害時対策の見直したい10のポイント②

 第3回に引き続き、筆者らが東日本大震災後に中小規模の医療・介護系施設16施設に行ったインタビューから得た、災害時マニュアルで見直したい10のポイントの後半の5のポイントを紹介する。

(6)物流

 表6に災害時マニュアルで見直したい「物流」に関する項目を示した。災害対策として3日間の備蓄が推奨されているが、災害4日後から通常の納品が再開される訳ではない。災害により物流が途絶えた場合, 備蓄食材を使い果たすと食事提供は不可能となる。給食を委託している場合には委託契約に災害時対応を含めることと、対応が不可能となることも想定しておくと良い。施設側も調達が困難となる食材の調達を全て給食受託会社に委ねることは無理である。物流の情報を入手するためにも、納入業者には最低1社は地元業者を含め、日頃から信頼関係を構築しておくことが必要である。

(7)食数

 表7に災害時マニュアルで見直したい「食数」に関する項目を示した。災害時には緊急入院や避難所からの受け入れにより、提供食数は増加する。よって災害時備蓄量は入所定員の基礎数よりも多めに設定することが必要である。また、備蓄のうち経腸栄養剤、嚥下困難者用食品、増粘剤や特殊ミルク等の特別食材は一般的な支援物資等では代替できない。災害時には通常の医療や介護サービスの提供が困難となるため、栄養状態が悪化して災害前の食種では対応できなくなることも考慮しておくと良いだろう。


(8)食材

 表8に災害時マニュアルで見直したい「食材」に関する項目を示した。災害時対応には災害時献立とともに3日間の食材や水を備蓄することが求められている。筆者らの調査では殆どの施設で備蓄は行われていたが、備蓄量は3日間に満たない施設もあった。震災後には多くの施設が適正備蓄量を5~7日と回答した。災害時備蓄食品の選定では、試食をして常温のままでも味の良いものを購入していた施設もあったが、味が悪く再度調味しなければならない製品もあった。購入時には試食が不可欠である。
 災害訓練には食事提供を含め、栄養部門だけではなく、全職員が備蓄場所や配食方法を確認しておくと良いだろう。職員用備蓄が必要であることは言うまでもない。

(9)食器・調理消耗品

 表9に災害時マニュアルで見直したい「食器・消耗品」に関する項目を示した。災害時備蓄に飲用水を準備していても、調理に関連する水を準備している施設は少ないのではないだろうか。災害時には機器・食器を洗浄・乾燥できない。多くの施設ではディスポ食器や食器にラップをかけて使用することを想定しているが、それらを用いて余震が続く中で作業することは難しい。
 また、使用した食器や容器の廃棄方法も検討しておかなければなければならない。筆者らの調査では仙台市でゴミの回収が正常化したのは、被災1ヶ月後であった。阪神淡路大震災、東日本大震災ともに発災時は冬季~早春であったため、ゴミからの感染症の拡大は少なかったのではないだろうか。食事提供後のゴミ処理等を含めて、災害時対応を検討し訓練することが求められる。

(10)厨房スタッフ

 表10に災害時マニュアルで見直したい「厨房スタッフ」に関する項目を示した。多くの施設で災害時のスタッフの安否確認や連絡体制は平常時から定めているだろう。しかし、スタッフが被災することもある。復旧が長引くとスタッフの体調管理も重要となる。発災直後は精神的高揚から乗り切ることが可能でも、業務の正常化までの期間が長引くと、スタッフの心身の疲労が蓄積していく。服薬しながら通常業務をこなしてきた中高年の職員も医療機関への定期受診や、薬の入手が困難となることも考えられる。災害対策では、復旧に向けて取り組むスタッフに関する想定も求められる。
 これまでの2回で、筆者らが被災地で行ったインタビューを参考に、災害時対策のヒントを述べてきた。災害による被災状況はその施設の状況により異なる。しかし想定や備蓄の不備など、弱い部分直撃することは明らかである。全国地震予測地図(文部科学省地震調査研究推進本部)、地震ハザードステーション(独立行政法人防災科学技術研究所)や各自治体が公表している被害想定マップも各施設の防災計画の参考となるだろう。自助を基本として、近隣施設との共助体制を構築していくことが必要である。
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